証券化:サブプライムローンとは

サブプライムローンの「証券化」(1)

景気低迷のきっかけとなったと言われるアメリカの「サブプライムローン」。
低所得の人や信用度の低い人を対象にした住宅ローンですが、いくら住宅価格の上昇が背景にあったにしても、完済が難しいと思われる人々を対象にしたローンのリスクの高さは、客観的に見ればやはり明らかですよね。

ですがサブプライムローンはどんどん広められていき、それを元にした金融商品がどんどん出回るようになりました。
そのような商品を利用している人々は皆、強い危機感は感じることなく、「自分は大丈夫」という疑わしい安心感を持っていました。なぜこのような事態を引き起こしたのでしょう。
そこには、「証券化」という金融技術が大きく関わっているのです。

日本ではあまり馴染み深くありませんが、アメリカでは、住宅ローンは転売されるのが一般的です。
融資を開始してからローンを転売することを目的としている貸し手のことを「モーゲージ・バンク」と呼んでいます。
モーゲージ・バンクは、どのようにローンを転売するのでしょう。
ここで使われるのが、「証券化」という仕組みです。

証券化とは、他に何もしていない名前だけの会社に資産を売却して、その会社が資産を購入するために証券を発行するという仕組みのことを言います。
この時発行される債券(借金)は、「RMBS」と呼ばれています。
RMBSは、「レジデンシャル・モーゲージ・バックト・セキュリティーズ」という長い呼び名の略語です。
RMBSは、主に保険会社や銀行など、機関投資家が投資対象となっています。
このRMBSが、サブプライムローン問題の大きな原因となったものだと言えるのです。

サブプライムローンの「証券化」(2)

アメリカのサブプライムローン問題は、アメリカだけでなく、欧米や日本の経済事情にも大きな影響を及ぼしました。
その大きな原因は、サブプライム住宅ローンが証券化され、拡散された点にあります。

もともと住宅ローンが証券化され、取引されるといったことは日常的に行われていることでした。ですがサブプライムローンというリスクの高い住宅ローンでも避けられることなく、広く取引されるようになったのは、どうしてなのでしょうか。

それは、「証券化」されることで、リスクに対する不安が移転されるという点にあります。

アメリカでは住宅ローンは転売されるのが一般的です。
転売をすることを目的として融資を行うので、融資してすぐに転売してしまえば、リスクに対する不安は回避できますね。
転売されたものは証券化されるわけですが、証券化はリスクの高いものと低いものとに分けて行われます。リスクの高いものは買い手がいないように思いますが、リスクの高い部分も何度も証券化されて、リスクが小さくなったように感じられ、売買されるようになります。
こうして証券化が何度も繰り返されるようになり、リスクの移転が次々に起こりました。
証券化された商品を買う人は、「一度は他者の目を通っている」と安心感を持ち、リスクに対して危機感を感じていませんでした。
売り手はというと、「他者に転売するものだから」とリスクに対して神経質にならなくなっていました。

誰も危機感を感じることなく、サブプライムローンを基盤とした商品は、全世界に広められていったのです。

証券化の「格付け」とは?

アメリカのサブプライムローンは、アメリカ国内だけではなく、世界の景気を低迷させるものとなったのですが、これはサブプライムローンが証券化され、全世界で商品化されて売買されていたことが大きな原因です。
何度も証券化されることにより、サブプライムローンのリスクがどんどん移転されていきました。ですが、買い手としては、安全な商品を買いたいはずですよね。
何故サブプライムローンのようなリスクの高いローンを使った商品でも、投資する人がたくさんいたのでしょう。

これは証券化の「格付け」というものが関係しています。
格付けとは、企業が発行する社債や、証券などについて、格付け会社が元利払いの確実性を評価するものです。投資する側からすると、プロによって審査されたものなら、安心ということになります。
サブプライムローンに関する商品は、二度三度の証券化を繰り返しているものだったのでとても複雑な商品でした。投資側は、より格付けに頼ることとなったのです。

サブプライムローンのようなリスクの高い商品でも、格付け評価は良かったの?と疑問に思う人もいるかと思いますが、実際、サブプライムローンを使った商品でも、トリプルAという高い評価が付いていたのです。何故なのでしょう?

証券化は、いくつかの住宅ローンを集めて行われますが、回収できる可能性の高いものと低いものを混ぜ合わせて作られます。
通常、10個のローンのうち、回収できないローンが1個あったとしても、回収したローンから損失を防ぐことができると考えられます。
また、回収できないローンがあったとしても、住宅価格が上昇していたアメリカでは住宅担保の価値はゼロにはなりません。
これらのことから、サブプライムローンのようなリスクの高いローンであっても、「損はしない」と考えられていたのです。

ですが結果的には、この格付けは間違っていたということになってしまいました。
10個のローンのうち、回収できないのは1個か2個、と考えられていたのですが、住宅価格の低下もあり、実際には5個や6個にまでのぼってしまったのです。

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